本文へスキップ

第97回白日会展 白日会第九十五回記念展予告


      3月10日 授賞審査風景

審査所感


 絵画部


 昨年の第96回展は、新型感染症対策の中、展示まで完遂いたしましたが、美術館が休館延長となり一般公開は叶いませんでした。
 それから一年、国内の美術活動の多くは中止か縮小となる事態となり、現在、収束の希望も見えますが、年明けからの緊急事態宣言の中での搬入・審査となりました。
 このような状況下ではありましたが、第97回展の一般応募は、新規に出品される方も多く、総じて若さと現代の「写実」の傾向を感じさせる熱意のある作品が寄せられ、結果として一般応募者数245名(273点)中、入選者は178名(178点)となりました。当会の平均的な応募者数、入選倍率と思われます。なお、推挙者は会友24名、準会員31名、会員34名となりました。
 白日会の鑑審査は、審査員の過半数の賛成と審査委員長の承認という制度で、公正厳正に入選と推挙、賞候補、授賞を決定していきます(「白日会の審査と展示、選抜の方法」をご参照ください)。 授賞作品の選考では、賞候補となった作品を審査会場に一堂にならべて、審査員の投票挙手とディスカッションを重ねながら徐々に絞り込み、審査委員長の示唆を得ながら、審査会の総意として授賞となるような方法で厳正に選定しています。
 本年の、白日賞をはじめとする「会賞」は、「白日会の写実」の本質と多様性を窺い知る事のできる選考となったのではないかと思います。また授賞者10名中、30歳代が4名、20歳代が4名という結果となり、若き出品者達の新鮮な写実絵画の勢いを感じさせる第97回展の審査となりました。

絵画部 常任委員会







 彫刻部


 新型コロナ禍の影響が心配され昨年彫刻部は展示を休止したが、本年は初出品も含め入選者は9名を数え、例年に近い展示点数となった。
 作品サイズは小品から中品、大作まで変化に富み、特に若い人たちの等身大の作品が数多く見られた。材質もブロンズ・石膏・鉄・石・アルミ・木・陶・漆・樹脂・紙など多くの種類が見られた。作者一人一人が材質の研究にも多くの時間をかけていることがうかがわれた。
 審査をして感じたことは、出品者それぞれが具象表現の基礎である人体表現を学び、それに加えて自分なりの新しい表現をしようという意欲である。そして彫刻表現でしかできないことを求めて制作をしているのが作品から感じられることである。若い人も増え、これからの白日会、ひいては日本の彫刻界にしっかりとした存在を示す可能性を感じた。白日会彫刻部は若手から中堅、ベテランと各層も充実しており、100年記念展に向けてその存在が期待されることを実感した審査であった。

彫刻部審査主任 山本眞輔









授与理由




内閣総理大臣賞      

作者名 河野 桂一郎      
題名 「はじまり」


完璧主義の写実で白の普段着のワンピース着た少女、バラ一輪持って立つ。細部に細かい神経が通っていて、全体のバランスも不自然さ、まるでない。あまりの完全さは虚構に通じる。その虚構を思った事だ。

瀧 悌三(美術評論家)







文部科学大臣賞      

作者名 池田 良則     
題名 「西陽のチュニジア」


明快かつ変化のある構図を生かした作品である。光と影の変化を的確に表現し、移ろう時間の流れを感じさせる。色彩の扱い方も効果的で、各色の魅力を充分引き出している。

土方 明司(平塚市美術館館長代理)







SOMPO美術館賞      

作者名 果醐 季乃子     
題名 「尾道風景 渡船のある町」


思うに、作者の目の前に広がる瞬間的なビジョンは、作者の内面から沸き起こる追想と共に、直観された憧憬の世界へ一気に転調されるかのようだ。大胆な描きぶりは、みずみずしさと共に切なくも温かい情感を画面いっぱいに広げている。作者は無意識にも日本の伝統的な絵心(えごころ)を掴んでいるように感じさせる。本賞の目的と共に、白日会が標榜する「写実」の精神の見えにくい一端を提示している作品として評価した。

絵画部 常任委員会