白日会第九十五回記念展 特別陳列

特別陳列 —白日会中興の祖 伊藤清永展—

会 場:白日会 第九十五回記念展会場(2A,2B,2C,2D)内、第2室(2A)
 共 催:兵庫県豊岡市(豊岡市立美術館 ―伊藤清永記念館―)


 平成三十一年3月20日から4月1日にかけ、国立新美術館(2A・2B・2C・2D)において白日会第九十五回記念展が開催されました。記念行事として前会長伊藤清永先生の業績を記念し、特別陳列「―白日会中興の祖 伊藤清永展―」を併催いたしました。

 伊藤先生の初期から晩年に至る作品の中より厳選された代表作を特別陳列し、伊藤芸術の素晴らしさを紹介、画家伊藤清永が日本の美術界に残した足跡を顕彰しました。没後17年を経て、白日会の中にも伊藤先生を知らない世代が増加している折から、彼らが伊藤先生の作品と直接対峙し、今後の作家人生の糧になればと願うものです。

 さらには、本特別陳列が伊藤芸術の偉大さ、素晴らしさを広く世に紹介する場となり、日本美術史上における伊藤清永の再評価に繋がる契機になることを願っています。

伊藤清永・洋画家

明治44年(1911)兵庫県出石町(現豊岡市)生まれ。 平成13年(2001)逝去。
白日会前会長・日本藝術院会員・文化功労者顕彰・文化勲章授章

目次

白日会中興の祖 伊藤清永

 伊藤清永先生は白日会第10回展から出品し、創立会員中沢弘光率いる白日会の、当時は新進気鋭の若手として質の高い旺盛な制作により活躍しました。
 また先の大戦と戦後の社会的大混乱と新しい美術潮流に翻弄され、存続が危ぶまれるほど弱体化した当会において、伊藤先生は「研究団体」の筋を通し「絵画の王道」を問い続け、常にこれらを自らの制作により体現しつつ、会の建て直しをはかりながら後進の育成に邁進し、当会を導き支え続けてきました。
 伊藤先生の情熱と粘り強い努力の上にやがてそれらは華となり果実となり、作家としては「裸婦」と「薔薇」の作品で高評価を得て後に文化勲章を受章、指導者としては中山忠彦現会長を筆頭に、第一線で活躍する多くの作家を輩出しました。また当会を「研究団体」として、常に会の中心で導き続け、プロ作家の育成とその集団化を図りつつ、一方自由で温和な協調性ある当会の会風を育て上げ、今日の白日会の基盤を作り上げました。
 こうした様々な業績は、伊藤先生が多難な歩みであった当会と苦楽を共にしながら作家人生を歩み続けたことにより成されたものであり、まさに伊藤清永先生をもってして白日会中興の祖とする由縁です。

裸婦の金字塔、洋画家・伊藤清永の歩み

 伊藤清永は明治44年(1911)、兵庫県出石町(現豊岡市)の禅寺の三男として生まれました。愛知学院大学の前身である曹洞宗第三中学林に通学、14歳から油絵を描き始め画家を志し上京、本郷絵画研究所で岡田三郎助に学び、東京美術学校に入学、能勢亀太郎(白日会第10回展より伊藤と共に出品)主催の画塾の書生を務め(ちなみに平松譲も能勢塾出身)、能勢の誘いで在学中に白日会第10回展に出品、白日賞を受賞し、同年の第14回帝展にも出品しました。
 24歳で東京美術学校を卒業した翌年、昭和11年(1936)文展で「磯人(いそど)」が選奨受賞。二度の徴兵を経験し、終戦復員後兄の住職代理を一時期つとめました。戦後の第3回、第4回日展にて特選を重ね、作家としての地歩を固めつつ独自の裸婦像を探求し、昭和28年(1953)42歳の時には「伊藤絵画研究所」を開設し、中山忠彦を筆頭に多くの後進を指導しました。
 昭和37年(1962)に渡欧し、パリ滞在制作やオランダ国立美術学校で制作。その後「伊藤の裸婦」として美術界で高い評価を確立し、「伊藤の薔薇」も好評を博しました。その一方、愛知学院大学講堂に約7年がかりで巨大油彩壁画「釈尊伝四部作大壁画」を制作し昭和59年(1984)73歳の時に完成しました。同年、日本藝術院会員となり、翌年白日会会長に就任、平成3年(1991)80歳の時に文化功労者に顕彰され、平成8年(1996)に文化勲章を受章しました。平成13年(2001)90歳にて、白日会第77回展に出品した後、6月5日急性心不全の為、軽井沢病院で没しました。

会期中の様子

会期中(3月22日)にはジュディ・オング倩玉会員が、ご自身がモデルとなった「女優 J 嬢」を前にしてのギャラリートークがありました。

会場風景
《釈尊伝四部作》のパネル展示

愛知学院大学百年記念講堂にて《釈尊伝四部作》を見る

奥の休憩室では伊藤清永の小品や資料などを展示しました。

展示作品(一部)

「海の肖像」
200号変形 昭和12年(1937)
如水会所蔵
「椅子に臥る裸婦」
100P 昭和26年(1951)
豊岡市立美術館―伊藤清永美術館―所蔵
「オランダの裸婦」
80F 昭和37年(1962)
豊岡市立美術館―伊藤清永美術館―所蔵
「母の肖像」
50F 昭和21年(1946)
豊岡市立美術館―伊藤清永美術館―所蔵
「曙光」
100P 昭和51年(1976)
日本芸術院所蔵
釈尊伝四部作「降臨」
380×270 昭和59年 (1984)
愛知県学院大学所蔵

共催:兵庫県豊岡市 豊岡市立美術館 ―伊藤清永記念館―

〒668-0214 兵庫県豊岡市出石町内町98
TEL 0796-52-5456/FAX 0796-53-2088
URL http://www3.city.toyooka.lg.jp/itoh-museum/

伊藤清永先生の郷里の美術館に多数の作品が収蔵されております。

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